[本文抜粋]
引揚げ船に向かう朝は、 雨混じりの風が吹いていました。 船に架かる橋を渡るとき、 置きざりにされるのを恐れた僕は、 父の上着の裾を必死に握りしめていました。
…上陸するや、 僕たちはチフスや赤痢を持ち込まないため、いきなり白いDDT (消毒薬) を頭から吹きかけられました。
…まるで流れ着いた丸太でも扱うように、 顔も首も頭も、 そも、 そしいような、 悔しいような、 ひどくみじめな気持ちになりました。
…船から下りると、 僕らには青いリンゴがひとつずつ配られました。
ひどく酸っぱいリンゴでした。
[主な内容]
はじめに ~散歩、そしてすこしの決心~
Ⅰ 〝引揚げ難民〟だったこと ・・・少年時代の記憶・・・
Ⅱ 〝青春〟は荒野をめざす! ・・・東京へ。この時代とともに!・・・
Ⅲ 時代はいつも〝ローリング・ストーン〟のように!
・・・クリスチャン・ディオール、そしてピンキー&ダイアン・・・
Ⅳ 老人〟も荒野をめざす!
・・・政治のことも、お芝居も。〝ふつうの人〟だから・・・
あとがき ~散歩、またひとつの〝決心〟~
[著者紹介]
中橋紀男(なかはしのりお)
1940年旧樺太「現サハリン」に生まれ。
桜美林短期大学卒業後、貿易会社に入社。営業職のかたわら製造部門の製作にも関わり、その技術をもとにヨーロッパの有名ブランドの日本におけるライセンス事業に参入。その後、独立し多数のブランド商品作りに携 わる。七十歳で引退し、その後は「市民政治バンド」、演劇集団「演劇バンド」、「都筑平和 教育クラブ」等々の活動に参加。現在は散歩と読書の日々を満喫中、です。



